natadmin2020-05-03T17:46:48+09:009月 14th, 2014|Categories: その他のお知らせ|Tags: Business, 仕事|
はいさい。フライトドクター ヨシバードです。 今週はじめて、医療専用機による搬送を経験しました。患者搬送を、英語ではEvacuation, MedEvac, Repatriationと呼びます。この仕事に携わるまでは、同義語だと思っていましたが違う意味であることを知りました。まずは、Evacuation.これは事故現場から最寄りの医療施設に運ぶことを意味します。ドクターヘリの症例の大方はこの分類に入ります。これらは、分単位で動きますのでほとんどは現地の救急システムで完結し、我々が関知しないうちに終わっていることが多いです。敢えていえば、会社に入った電話でKey Word要請に繋がりそうな症例は、現地の救急システムを立ち上げ救急車や往診医を派遣することもあるますが、数はそう多くはありません。 次にMedEvac.これは一旦病院に収容され、一時的な診断や処置を受けたあとに、更なる高次医療機関へ搬送することを意味します。転院搬送ですね。医療後進国から医療先進国に搬送し、世界標準の治療を受けさせるというものです。日本では輸血、消毒器具、薬剤はじめ、当然のように安全なものが使われていますが、国によってはこういった安全基準がないところも多いです。医療関係者の教育や感染予防の徹底についても千差万別です。 病態が落ち着いていれば民間機で医療チームが付き添うことになりますが、状態が芳しくない場合がほとんどですので、医療専用機を使用することが多いです。チーム編成は、病状により一般医か、麻酔/救急/集中治療を背景にもつICUチームが選ばれることになります。新生児ではNICUのチームが選ばれます。搬送中のリスクを最低限にするため、搬送先は最寄りの先進国となります。東南アジアでは、シンガポール・バンコク・香港、東アジアでは台湾・ソウル・日本が高次治療の受け入れ国となります。 シンガポールは、周辺国(遠くはインド洋諸国からインドシナ半島まで)から実に多くのMedEvacを受け入れています。外国人の受け入れに対するハードルがほぼ皆無です。香港同様、英語圏であるのが最大の強みだと思いますが、シンガポールは多種多様の民族から混成されており、国民全体が外国人に対する特別意識が薄いこと実感します。患者がインド系だろうとマレー系であっても、それぞれの宗教や習慣にあわせた食事やナーシングケアがなされますし、医療スタッフは英語+各民族の言語を話せるので、言葉の問題は発生しません。そして、医師の多くは英国システムで専門研修を受けているので、欧米の文化に対する理解も深く、多くの外国人が自分の国以上のサービスを受けに訪星しているといっても過言ではありません。 最後にRepatriationですが、これは急性期が過ぎ落ち着いた患者、あるいは終末期患者における本国送還を意味します。「下り搬送」がわかりやすいでしょうか。治療は大方終了し残すはリハビリや定期受診が残るのみとなった患者さんを、住み慣れた国に帰すサービスです。これは先ほどのMedEvacと反対に、民間機での搬送が圧倒的に多いです。ただ、どのように民間機に乗せるのか、席の場所や車いすはどうするのか、医療エスコート編成や酸素など、経由便であればトランジット時間や空港設備がどうなのか、到着空港から先はどうするのか、受け入れ先選定...などなどAir Ambulance以上に考えなければいけないことが多く侮れないです。 実はもう一つ、遺体搬送もやっていますが、こちらは医療チームが携わらないので割愛します。 機内で多くの処置はできませんが、フライトチームのミッションは、最短の時間で患者状態を悪化させることなく次の医療施設に引き継ぐこと。それを指揮するcoordinating doctorはありとあらゆるリスクを想定して、万全の体制で搬送が行われるよう、各国のアシスタンスセンターと連携をとりながらプランを練っています。 […]